蓄音器で薩摩琵琶を
現在、明治神宮の春秋の大祭には、神前に特設の舞台が設けられ薩摩琵琶の演奏が奉納されております。
明治天皇は薩摩琵琶がお好きで、ご在世中にその演奏を鑑賞された記録は数多く残されています。ときおり侍従を呼んでみずから大声でお歌いになって、朗詠指導をなさることもあったそうです。
毛利邸で薩摩琵琶と筑前琵琶を鑑賞なさった天皇は、
「琵琶というものは、昔から軍(いくさ)などの時に陣中で志気を鼓舞するためにやったものであろう。だからなるべく勇ましい調子がいいのである」
とお話しになりました。
また、あるときには女官に「琵琶を作ってみよ」とおっしゃって、その手作りの琵琶をご自身が演奏されることがありました。その時にはよく昭憲皇太后がお作りになった「金剛石」をお歌いになったといわれています。
いまここに人のゐるかとおもふまで
こめたるこゑのさやかなるかな
これは「蓄音器」と題して明治37年にお詠みになったお歌です。
蓄音器は明治36年6月にトーマス・エジソンが明治天皇に献上したほか、幾度かの献上が記録に残っています。天皇は後年、毎晩おやすみの前に蓄音器で薩摩琵琶をお聞きになったそうで、「落花の雪」「七卿落(しちきょうおち)」等は特にお気に入りであったようです。
【蓄音器】