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【平成29年】

新年号

『代々木』は、明治神宮・明治神宮崇敬会が発行する季刊誌です。

我が国の美しい伝統精神を未来に伝えるため、昭和35年より刊行をつづけております。

明治神宮崇敬会の皆様にお送りしております。

 

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小説『落陽』を書いて
小説『落陽』を書いて

朝井まかて(小説家)

小説としてぎりぎり

歴史小説はもちろんフィクションですけれども、史実に対する尊敬がまずあります。が、今や、史実の解釈も日々、更新されています。ですから自分なりの解釈をどこまで小説で行なうのかは、常に挑戦です。

土足で踏み込む形には絶対にしたくないのですが、想像の可能性を信じたかった。その最たるものが、明治天皇の心情のシーンです。小説としては、ぎりぎりの攻め方でした。

 

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朝井 まかて(あさい・まかて)

昭和34年、大阪生まれ。甲南女子大学文学部卒業。平成20年、『実さえ花さえ』(のち『花競べ』に改題)で第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。同26年、『恋歌』で第150回直木賞受賞。 『落陽』は祥伝社より刊行。

鎮座百年記念 御社殿群修復工事 誇らしく、緊張をもって
鎮座百年記念 御社殿群修復工事 誇らしく、緊張をもって

先達の思い受け止め(上席エンジニア 小橋孝吉)

編集部:調査をすると、先人の心が感じられるのですね。

 

小橋:表に見えないところで、剥がしてみて初めてわかる、そういう工夫がされています。社寺建築という木造建築は、通常三百年くらいの単位で解体して、悪いところを修理しながらまた組み立てて、と千数百年修復していくんですけれども、その時に「いいものをつくろう」という先人の一念、思いがよくわかるんです。外から見てなかなかわからないし、評価はその時ではなくて、修理をしないとわからない。それだけのことを先達(せんだつ)の方々はやられてきているわけで、私たちもきちっと受け止めてやらないといけないと思います。

 

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代々木の杜の生態のはなし
代々木の杜の生態のはなし

正木 隆(森林総合研究所 森林植生研究領域長)

二度とできない杜

明治神宮の杜の木は、産地が混ざっていますね、献木を全国から集めたので。このような森づくりはいろんな地域の遺伝子を混ぜ合わせてしまうことになるので、今は推奨されません。その地域で生産された苗、周辺の木の遺伝子をちゃんと残す方がよいという科学的な知見が確立されています。明治神宮創建の頃はそういう知識がありませんでした。

ですから逆に、明治神宮の杜は面白い、と言えます。完全に孤立した林なので、樹木に関してはこの中で遺伝子のやり取りが行われます。一体どうなるのか予想がつきません。

 

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正木 隆(まさき・たかし)

昭和39年、東京生まれ。東京大学大学院農学系研究科修了、農学博士。国立研究開発法人・森林総合研究所森林植生研究領域長。編著書に『森林生態学―長期大規模研究からみえるもの』(文一総合出版)、『森林生態学』(共立出版)等多数。

聖蹟を歩く 第24回 明治13年甲州・東山道巡幸(8)
聖蹟を歩く 第24回 明治13年甲州・東山道巡幸(8)

(桑名市)内宮の宇治橋から移築・整備された鳥居

桑名ご上陸

江戸時代の東海道は、熱田(あつた)の宮宿(みやしゅく)と桑名宿を「七里(しちり)の渡し」と呼ばれた航路で結んでいたため、当地は桑名の表玄関であり、東海道を往来する人々や伊勢の神宮への参拝者たちで賑わいました。明治天皇がご滞在の時期には、洋風建築の警察署や電信局が設けられ、街は活況を呈していました。

川から上陸すると、有名な「一の鳥居」が出迎えてくれます。天明年間(1781~89)より、神宮の式年遷宮のたびに古材の払い下げを受け、「一の鳥居」が設けられるようになりました。神宮へ向かう人々が最初にくぐる鳥居です。現在の鳥居は、かつて宇治橋の西詰(にしづめ)に設置されていたもので、平成25年(2013)の第62回の遷宮に際し移築されました。当地への設置は、平成27年6月のことです(写真)。

 

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打越 孝明(うちこし・たかあき)

昭和35年、茨城県水戸市生まれ。早大大学院に学び、同大学助手や大倉精神文化研究所専任研究員などを経て、現在明治神宮国際神道文化研究所主任研究員および早大非常勤講師を務める。著書に『絵画と聖蹟でたどる明治天皇のご生涯』、共編著に『日本主義的学生思想運動資料集成Ⅰ・Ⅱ』や『大倉邦彦の『感想』―魂を刻んだ随想録―』、論文に「明治天皇崩御と御製 上・下」(『復刊明治聖徳記念学会紀要』25・26)などがある。