「うつせみの 代々木の里は しづかにて 都のほかの ここちこそすれ」
明治天皇がこのようにお詠みになりました御苑は、江戸時代初期以来加藤家、井伊家の下屋敷の庭園でしたが、明治時代に宮内省の所轄となり、代々木御苑と称され、明治天皇、昭憲皇太后にはたびたびお出ましになられたゆかりの深い名苑です。
明治天皇が昭憲皇太后のために植えさせられた菖蒲田の花菖蒲は、現在も大切に守り育てられ、6月には見事な花を咲かせます。
御苑の花菖蒲は、明治36年、明治天皇の思し召しにより昭憲皇太后のために植えられたものです。
明治神宮造営当時は、江戸系の80余種があったと伝えられており、その後、堀切(葛飾区)など東京近郊から江戸系の花(※注1)が集められ、現在では約150種1,500株が咲き競います。
明治の御代(みよ)から、仙人洞(せんにょのほら)、九十九髪(つくもがみ)、都の巽(みやこのたつみ)などの菖翁花(しょうおうか ※注2)が大事に育てられています。
新緑で輝く雑木林に囲まれ、清正井(きよまさのいど)から湧き出た清らかな水によって潤う菖蒲田は、比類のない気品をたたえております。
- ※ 注1 花菖蒲には「江戸系」「肥後系」「伊勢系」などがあります。
- ※ 注2 江戸後期、「花菖蒲中興の祖」といわれる松平定朝(通称・菖翁)が作出した品種をいいます。
毎年6月前後の花菖蒲の様子をご紹介してまいります。
日本画で描かれた花菖蒲と写真を並べてみました。菖蒲田で探してみませんか。
九十九髪(つくもがみ)
三笠山(みかさやま)
仙女洞(せんにょのほら)
王昭君(おうしょうくん)
都の巽(みやこのたつみ)
立田川(たつたがわ)
鶴の毛衣(つるのけごろも)
五湖遊(ごこあそび)