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コラム「大和心」
タイトル

 このコラムは、10年10ヶ月前につぎのような狙いを持って始まりました。

 至誠館では「現代に生かせる武道」を目指しています。日本民族の高貴なる伝統文化に基づく、大和魂の精華としての武士道精神の探求と実践。即ち、高い精神的価値の探求、生死を超えた気概の養成、現代の闘いに生かせる術理の修得、時事に通じた的確な時代状況の把握と国家社会の実践運動への参画が、現代に生きる真の武道の修行実践といえましょう。

 時々刻々と揺れ動く国際情勢、未だに「戦後的価値観」の呪縛から抜けきれず、内外の危機への対応不全を来たしている日本の危機的国情、身近に起きる凶悪犯罪……国内外から「武士道」が注目を集めているのは、そんな不安定な世の中だからこそかもしれません。武道を修錬している人はもちろんのこと、日本の魂(こころ)を大切にしたいと思う方々に届けたいという願いをこめて、コラム「大和心(やまとごころ)」を始めました。

 10年という年月が長いか短いかはさておき、実践者として10年を振り返り、自らの実践成果を省みるには良い結節ではあるかと思います。

 精神探求、気概養成、術理修得は個々の内なる修練課題ですから、一人ひとりが自分に問いかけるのが良いでしょう。問題は、時事に通じた的確な時代状況の把握と国家社会の実践運動への参画によって、目的を達成できたか、あるいは、目的達成に着実に邁進しているかどうかです。何もしなかったというのは論外ですが、実践をしてきたつもりだが目的達成はおろか、見通しも立たないというのであれば、もう一度、自らの目的と実践について立て直すべきでしょう。

 自分が為した、あるいはこれから為す社会的運動を評価するためには、国内情勢だけではなく国際情勢も正しく把握する必要があります。社会的運動というのは、常に情勢の動きに適応していなければならないからです。

 世界は、ポスト・グローバル資本主義(市場原理による自由競争主義からの脱却)へ動いています。それに伴い、各国の政治形態は、エリート主義から民衆主動のポピュリズムへと変化しています。11月16日、オバマ大統領がアテネでの演説で、「グローバル資本主義の進展によりもたらされた格差拡大や既存政治への不満が広がっていることが、英国のEU 脱退、米国の大統領選挙の背景」だと指摘しました。欧米先進国の国民でさえ、「グローバル経済主動の自由競争は、自分達が慣れ親しみ育んできた文化や価値を破壊する」という認識に立ち、伝統的文化社会を保全しようとする国民的運動が広がっているのです。

 冷戦後の米国主導の政治・経済・国際軍事活動は、世界新秩序すなわち世界の自由市場拡大のために展開されてきました。これを続ければ、経済競争に勝てない国や人々は、経済格差を否定するイスラム文化圏に帰属するか難民化して経済競争の勝者の保護を求める傾向を強めます。その影響は欧米諸国の内部にまで深く広く浸透しています。さらには、反市場国家の最後の砦・ロシアとその賛同国は、市場化か戦争かの選択に向かうでしょう。

 英米そして欧州各国において脱市場社会を目指す勢力が拡大していく中、現在の我が国の経済・安保等の政策は、あくまで市場主義の立場を貫こうとしています。これは、伝統的文化社会を破壊する道を選択していることになると思います。

 もう一つ、オバマ大統領の演説で特徴的だったのは、民主主義とポピュリズムを対比させている点です。どちらも国民の意志による選択ですが、なぜ対立概念にあるのでしょうか。ポピュリストは、現行の政治意思はマネーの力に管理されエリート(大企業、資産家、官僚等特権者)によって決定されており、民衆の意思は反映されていないと主張しています。逆に、この特権者といわれる人々は、ポピュリズムを愚衆政治と呼び、それによって選ばれる政治家は扇動家ということになります。

 近代啓蒙主義以降の民主主義は自由主義の精神を代弁しており、近代以前、例えば、ギリシャのデモクラシーは愚衆政治と呼ばれ、現代でもスイスのような国民直接投票による政治意思の決定もまた愚衆政治と呼ばれています。自由主義精神を基盤とした民主主義において、国民が国政に対して出来ることは、間接選挙において自由意志で投票するという行為が全てです。

 つまり、ポピュリズムと対立関係にある民主主義とは、政治意志の決定と法治秩序の構築に民衆を直接参加させない仕組みのことなのです。

 そもそも、なぜ国民の意志で政治を行うことが愚衆政治なのでしょうか。日本のように、政治的サイレント・マジョリティーが大多数を占める国家において、天皇陛下のしろしめす統治は、まさに人々の心を知って政(まつりごと)をするための大事な伝統です。

 聖徳太子が制定したといわれる十七条憲法では「十にいわく、衆に従ひて同じく挙(おこな)へ」とあります。ここでは、エリート主義を厳しく戒めております。天皇陛下が国民の実情と心情を知り安寧を祈る。政治を行うものは、その天皇陛下の大御心に副い奉ることで、国民を幸福にする政治が行われるのが日本の流儀だと思います。

 私達国民は、今上陛下より「国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは,幸せなことでした」とのおことばを頂戴し、ただただ報恩感謝の念を持って大御心に副い奉らんと力を尽くすことが大事です。

 自らを振り返り、自分の為してきた社会的実践運動が、君民共治の日本再建に向かうものであったかどうか。エリート主義や政治的合理性に流されず、謹んで身を正し、あらためて、武道を修錬している人はもちろんのこと、大和魂(大和心)を大切にしたいと思う方々と伴に、大御心に副い奉る社会的運動を実践していきたいとの気持ちで、コラム「大和心」をしめたいと思います。(あ)

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