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コラム「大和心」
タイトル
 71年前、雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて、世界は変わった。閃光と炎の壁は都市を破壊し、人類が自らを破壊するすべを手に入れたことを実証した。
 なぜわれわれはこの地、広島に来るのか。それほど遠くない過去に解き放たれた恐ろしい力について考えるためだ。10万人を超える日本の男性、女性、子供たち、多くの朝鮮半島出身者、そして捕虜となっていた十数人の米国人を含む犠牲者を追悼するためだ。
 彼らの魂はわれわれに語りかける。彼らはわれわれに対し、自分の今ある姿とこれからなるであろう姿を見極めるため、心の内に目を向けるよう訴えた。

 これは、オバマ大統領がG7伊勢志摩サミットを終えて広島を訪れ原爆死没者慰霊碑での演説の冒頭の一説である。
 現職の米国大統領が戦後71年目にして初めて被爆地を訪れ、被爆者とも言葉を交わした意義は大きく国内外から歴史的と歓迎されて、本来の役割のG7の伊勢志摩サミットの国際政治ショーの効果をはるかに凌いだともみられている。が、ここには原爆投下をめぐってのアメリカと日本の関係から二つ識者の特徴的な意見を取り上げてみたい。

 一つは、ニューズウィーク誌(日本版)5月31日の「アメリカとヒロシマ――原爆をめぐる日米それぞれの物語」の中の「トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味」という記事。トルーマンは1945年、日本への原爆投下を決めた大統領で、その孫のクリフトン・トルーマン・ダニエル氏(58歳)に、戦時中、岩手県釜石市の連合捕虜収容所の所長を務めて、B級戦犯となった日本人を祖父にもった女性記者がインタビューしていて、ダニエル氏の言葉を通して「謝罪」と「責任」の本質を探る――とある。

――オバマ大統領の広島訪問についてどう思いますか。
 素晴らしいことだ。そう思わない理由がどこにあるのだろう。私はホワイトハウスに手紙を送り、広島と長崎訪問を促したことがある。訪問が難しければ、アメリカ国内で被爆者と面会すべきだと進言したこともある。
 オバマは09年(のプラハの演説で)、アメリカは原爆を使用した唯一の国として核兵器の削減や廃絶に主導的役割を果たすべきだと語っていた。だから私が12年に訪日した際、被爆者はオバマに来てほしいと言っていた。
 被爆者が望んでいるのは核廃絶だ。広島で亡くなった人々に敬意を示すのはもちろん立派な行為だが、オバマ大統領には少なくとも数人の被爆者に会って直接話を聞いてほしいと思う。
――とはいえ、オバマは原爆投下を命じた張本人ではありません。それでも彼が広島に行くことの意味は?
 現職の大統領だからだ。ジミー・カーター元大統領も訪れているが、退任後だった。現職の米大統領が広島を訪れるのはこれが初めてとなる。原爆は今も存在しており、大きな政治課題だ。オバマなら、原爆は誰にとっても悪であり、アメリカが核廃絶を主導していくとの決意を語ることもできる。

 と現職大統領の広島訪問を高く評価、核廃絶の主導に強い期待を寄せている。

 次に産経新聞ワシントン駐在特派員の古森義久氏の5月28日のコラム「緯度経度」の「原爆投下議論の実体験」をみてみたい。同氏はベトナム戦争以来、アメリカをみている世界でも有数のベテラン記者といえる。予測どおり同大統領は原爆投下の是非には触れなかったと指摘しつつ、

 だが米国大統領の広島来訪の意義を今後考える上でも、日本側としてはこの是非論に背を向けることはできないだろう。

 と鋭く問題提起しているのは、他の報道にぬきん出ているといってよい。そこでチャールズ・スウィーニー氏という広島と長崎の両方への原爆投下作戦に加わった唯一の米軍人と、22年前に米国CNNテレビ討論で議論したことが興味深く語られている――。

 そしてスウィーニー氏も「日本本土上陸作戦で予測された戦死者数を考えれば、原爆投下は適切だった」と述べたのだった。
 その後に発言を求められた私は原爆の非人道性と日本側の惨状を指摘し、次のような要旨を述べた。

 「当時の米側はソ連の参戦も決まり、日本の降伏を確実視していた。とくに2発目の長崎への投下は、戦争の早期終結が目的ならば不必要だった。もし日本側に原爆の威力を示したかったならば、無人島や過疎地にでも投下すれば十分だった」

 するとスウィーニー氏は、当時の日本軍の前線での徹底抗戦ぶりや国家首脳部の「一億総玉砕」の宣言をあげて、原爆がいかに多くの人命を救ったかという主張を語った。その語調はきわめて穏やかだった。

 私は、「20万以上の民間人の犠牲を、戦争継続の場合の戦死者の予測数で正当化はできない」と反論したが、日本軍と実際に激戦を続けた体験を踏まえての同氏の主張には、つい説得力さえ感じさせられた。

 そのスウィーニー氏も終戦直後に長崎市を訪れ、破壊の惨状をみて、「どれほどの人間の命が奪われたかを考えて悲しみに襲われた」と回顧していた。

 古森氏は、同氏(スウィーニー氏)のこうした言葉が象徴する米側の思考や心情と日本側の受止め方との差異は、オバマ大統領の広島訪問でも消えはしないと記しているが期待もにじませている。

――だが、その訪問は相手側の実情のより深い認識による、より健全でより緊密な日米関係の未来への歴史的な前進となることを期待したい。

 と結んでいるのは、その表れだろう。26日のG7伊勢志摩サミット首脳陣の伊勢神宮訪問でにわかに高まった精神性は、国際政治協調にいかほど影響したであろうか。27日の米国大統領の広島訪問が日本人に与えた精神的インパクトは測り知れないものがあろう。(み)

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