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コラム「大和心」
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 安倍政権は5月15日、新たな安全保障法制の関連11法案を国会に提出した。政府・与党は、今国会での成立を目指している。

 日米政府間で合意しながらも、日本側が保留してきた安保・防衛上の課題が、安倍政権になって一挙に法案として提出されたかたちだ。

 そもそも、戦後一貫して、日本の安保防衛政策は、日米安保体制を維持することだけを目標としてきた。その結果、日本の主体的安保防衛戦略は存在せず、常に米国の安全保障戦略下に、米国の日本に対する期待にどの程度応えるかが、日本の安保防衛政策の課題だった。政府与党と野党の政策の違いは、米国の要求に対する態度が積極的か消極的かの違いだけだ。その意味では、安倍政権は、戦後最も積極的に米国の期待に応えることを選択したことになる。

 戦後再軍備からの歴史を振り返ると、占領下、米軍総司令部が常に先行して計画し、日本側は米側の意図もよく理解できないまま警察予備隊が編成された。

 サンフランシスコ平和条約発効に当たって、米軍総司令部は、対日平和条約の発効で日本が主権を回復すると、米軍が警察予備隊を運用統制する関係が解消することを懸念した。ダレス特使が提示した日米安全保障条約草案では、「日本地域で戦争行為または戦争行為の危険が急迫した際には、警察予備隊及びすべての日本の武装部隊は、日本政府と協議後に合衆国政府により指名された最高司令官の統一指揮下におかれる」ことを希望した。

 しかし、日本側は日米間の指揮関係をうやむやの状態にし、その状態が今でも続いている。つまり、米国は日本を助けてくれるかどうかなどと言う前に、日米間の指揮関係がないのだから共同軍事作戦のやりようがない。

 今回の集団的自衛権の行使是認は、長年の米側の期待に応え日米間の指揮関係構築を促進させる可能性がある。その場合、海外の作戦において自衛隊が米軍の指揮下に入ることになることは疑いようがない。海上自衛隊は、創設経緯が米軍隷下の部隊からスタートし、一貫して米第7艦隊下の機能補完的防衛力整備を進めてきたので、米軍の下で働くことに全く抵抗感はないかもしれない。しかし、自国防衛を主任務と位置づけてきた陸上自衛官には「なぜ米軍の指揮下で働かなくてはいけないのか」「米軍の戦略のために危険をかえりみず戦うことはできない」という思いがあるだろう。

 日本政府は、米国の経済支援を得るため、やむを得ず昭和29年3月、日米間でMSA協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」)を締結した。この協定では、自国防衛の努力が課せられていた。米側は最低でも約35万の陸上戦力が必要と日本政府に迫ったが、日本政府は、憲法上、国内戦しか実施しない陸上部隊の後方支援は民間の力を導入するとして、その勢力を18万まで値切った。これが、池田・ロバートソン会談だ。しかし、現在に至るまで、自国防衛に際して、所要の民間の輸送や補給整備能力を陸上戦力として強制運用できる法律がないことからも分かるように、自国防衛すら真面目に準備せず、米国の要求を日本側が値切りながら承認するという日米交渉の構図の原型が、ここでできた。

 その後、防衛構想も持たずに、18万規模の戦力造成と言う米側との約束を達成するため、一次防衛力整備計画から四次防衛力整備計画がすすむ。

 しかし、あくまで経済を優先する日本政府は、昭和51年の三木内閣において、51防衛大綱を作成し防衛費の増大を抑制するためGNP比1%枠を設定した。そして、その時点での中途半端な防衛力を「基盤的防衛力」とし、脅威対抗論に基づく所要防衛力構想とは正反対の平時戦力と説明した。そして、もし本当に侵略の脅威が顕在化した時は、戦力を(所要レベルに)増強して対処するとしたが、戦力を増強するための法律等は、今まで検討すらされていない。つまり、自国防衛すら自主的に対処する意志などなかったということだ。

 冷戦が終わり、日米同盟の役割は日本防衛だけではなく、周辺事態の地域安定化の役割をも果たすことに合意し、1997年のガイドラインが作成される。ここで謳われた日米共同計画の作成や指揮、調整メカニズムは課題のまま現在に残っている。

 2005年、小泉内閣で「日米安保の未来のための変革と再編」が合意され、日米同盟の役割を、さらにグローバルな世界全体の安定化へと拡張する戦略転換が約束された。しかし、日本側に具体化の進展がないことから、当時の国防総省アジア・太平洋安全保障担当副次官リチャード・ローレスは「安全保障に関して、米国は日本には何も期待するべきでない。日本は、とりあえず自分の国の防衛だけでもいいから、自分でしっかりやれる状態にするべきだ」とオバマ大統領にレポートを提出した。

 今回の安保法制案も、尖閣などの領域警備のような、自国で対処すべき課題についての具体的進展はない。これまで米国から要求されていたことに対して頑張って応えますという内容だ。

 そして何よりも、米国の戦略下に日米関係さえ保持していけばそれでいいのだ、という安保政策を何の検証もなく、いまだに続ける体質こそが、戦後一貫して日本の安全保障と防衛に内在する核心的問題である。

 もちろん、憲法を守れば日本の安全と防衛が担保されるなどと言うばかげた考えは真面目に考える対象にもならない。そんなことで安全が保障されるのなら、他の国々も、自国の憲法に同様の内容を謳うはずだ。

 自衛隊のリスクが増えるか増えないかなどという議論もくだらない。本当に国家のためになるのであればすすんでリスクを負うのが自衛隊だ。

 大事なのは「何のための安全保障・防衛なのか」だ。お互い他者を尊重し助け合う共助共栄の社会を守ることこそが、日本の安全保障であり防衛ではないのか。

 神武建国以来、「八紘を掩(おお)いて宇(いえ)と為(せ)む」(世界を一つの家のように為そう)と君民一体となって国創りをしてきた伝統文化を守ることが、日本の安保・防衛戦略の目的であるはずだ。行き過ぎた競争主義を共助主義に、利己主義を利他主義に、自由主義を思いやり主義に転換し、グローバル・スタンダードを強要するのではなく、地域地域のローカル・スタンダードを尊重するのが「八紘を掩(おお)いて宇(いえ)と為(せ)む」の精神だ。それは日米安保によって守ることはできない。日本人が自ら為さなくてはできないことだ。(あ)

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