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コラム「大和心」
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 スコットランドの独立をめぐる投票が行われた。サッチャー以来、英国の自由競争主義政策とそれに伴う貧富の格差拡大にスコットランド国民は疲弊した。イギリスの根本政策が変わる見込みがない以上、小手先の政策ではこの状況は改善できず、いっそう悪化するのみである。このような判断から、イギリスの自由競争主義政策とは決別し、自立した共存共栄の福祉国家樹立を目指しての動きである。

 投票結果は僅差で独立を否決されたものの、ロイター通信は、英政府の進める自由競争主義政策に対する反発はスコットランドにとどまらないとしている。今回は独立が否決されたものの、自由主義と民主主義の対立はいっそう顕在化してくるであろう。

 もう一つ。イスラム国の戦いに世界が注目している。日本のメディアはすべて米国の視点で報道するため真実は伝えられていないが、シリア北部ISISの本拠地とされる都市ラッカに潜入し、組織中枢を取材した報道カメラマン・横田徹氏によれば、世界各国からイスラム国に集結している彼らは、欧米の自由競争主義によって伝統的共助社会が崩壊し貧窮に陥った人々で、イスラム教の「平等と正義」に賛同し、武器を持って富の格差に抵抗しようとしているという。

 このようなことは、米国が市場原理に基づく自由競争を自国の戦略として採用したときに予想していたことである。ブッシュ大統領時代に国家戦略となった「テロとの戦い」のための軍事教範では次のように言っている。

 グローバル化は、地球規模での繁栄に肯定的な影響を与え続けている一方で、テロを世界中に輸出している。相互依存の経済は、巨大な富を可能にしている。失敗のリスクが大多数の者にもたらされている間に、この富の恩恵が、少数の者の手に集中され続ける。この富の不平等な配分は、しばしば紛争の種である“持つ者”と“持たない者”の状態を創出する。この二分化は、北半球の先進国家とその南部や南半球の発展途上国の間で明らかである。専門家は、2015年までに、最大で28億の人々が貧窮以下のレベルの生活であり、そうした人々はほとんど例外なく発展途上国の経済的に“持たざる”地域に住んでいるだろう、と分析している。これらの人々は、過激派グループによる募集に対してより脆弱である。又、グローバル化は、経済面、情報面、そして軍事面においてさえ、更には国家の経済・情報・軍事と競い、或いは凌駕することによる外国面での地位における非国家的な行動者の出現に貢献してきた。国力や影響力の低下は、外交的な相互作用をより困難かつ複雑にしている。既に幾つかの国家がグローバル化に取り残され、より多くの国家が、グローバル化のテンポの増大に追いつけないであろう。結果として、そうした国の住民は、苦しむとともに、彼らの不平不満を表現し、世界的な繁栄を共有するという果たし得ない望みを増大するため、過激なイデオロギーを信奉する傾向に向かうだろう。

 つまり、イスラム国の誕生は、自由競争主義が作り上げた当然の帰結だ。「テロとの戦い」とは、市場によるグローバリズムすなわち自由競争主義によって必然的に顕れる富の格差に対する不満を、軍事力によって鎮圧するということである。米軍と行動を共にするということは、「人類が繁栄を共有することを明確に否定し、勝者のみが繁栄の恩恵を独占する」米国の戦略を遂行することを意味する。

 スコットランドの独立とイスラム国の問題は、全く別のようだが、市場原理主義に基づく自由競争社会の拒否と言う点では共通している。

 今世界では、平和的民意によって民主主義を尊重する共助社会を構築する動きと、実力行動をもってでも格差のない伝統的共助社会を取り戻そうとする動きが現れてきているのだ。

 現在、このような顕著な行動に至っていない国々でも、世界の人々は、市場原理による自由競争を加速するのか、民主的共助社会を目指すのかの選択を主体的に議論し、世界の大転換に備えている。

 にもかかわらず、日本はいまだ冷戦構造のような左右の対立を引きずったまま、民意がまとまらない状況が続いている。今世界で、こんな過去のイデオロギー対立で国民が対立している国は他にないだろう。

 幸い、インターネットの普及により、だれでも、あらゆる情報ソースにアクセスできる環境になり、世界情勢の実態と日本社会のいびつな構造が認識できるようになった。

 日本人が、戦後日本の固定観念を捨て、世界の動きの当事者としての自覚を持てば、日本のみならず世界をも修理固成する力を発揮するかもしれない。その際、歴史の当事者たる意識を持てば方法論も見えてくる。

 幕末、日本は今と似たような状況に置かれた。ペリーの強圧外交によって、グローバル化に身を呈するか否かの決断に迫られた。攘夷論者であった井伊直弼は、大老と言う幕府の最高責任者の立場に立ち米国との交渉の矢先に立つと、その考えを豹変させ尊皇攘夷の活動を弾圧した。

 尊皇攘夷の活動の思想的拠点の一つでもあった水戸藩の内部では、保守門閥派と改革派が対立した。この改革派が維新の国民運動とも言うべき士農工商一体となった尊皇攘夷活動を展開するのだが、その活動が激烈化してくると、尊皇攘夷を言明していた会沢正志斎らは孝明天皇の勅書返納を主張し幕府の命に従う態度をとった。これに対し、あくまで天皇の勅書に従い尊皇攘夷を決行すべきとする急進派が対立した。この急進派は、幕府と水戸藩の弾圧の中、桜田門外の変をはじめ次々に実力行動による尊皇攘夷活動を展開する。この急進過激といわれた尊皇攘夷活動なくして維新は起こりえなかった。他方、幕府に迎合した会沢らは改革阻害勢力へと変質する。明治天皇の『維新の宸翰』にあるように「武家、権を専らにし、表は朝廷を推尊して、実は敬して是れを遠(とおざ)け」るような既得権力の中からは決して維新は生まれないということだろう。

 神武建国以来、八紘為宇を君民一体となって実践するのが日本人である。被災者や社会の弱者に寄り添う大御心を奉戴し、「弱きを助け強きを挫く(横暴なる強者を懲らしめる)」武士道精神を発揚して伝統的共助社会を維持発展させることこそが、伝統的日本人の果たすべき使命であろう。(あ)

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