メニュー
明治神宮ロゴ
メニュー
コラム「大和心」
タイトル

 集団的自衛権の議論を見ると、多様な思惑が交差し論点もさまざまである。例えば、集団的自衛権を引き金に憲法改正を狙っているのではないかという見方がある。これについては、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が明言しているように、憲法解釈の変更を目指しているもので、これが改憲を目的とした動きであるとはいえない(内閣法制局長人事などもこうした方向)。むしろ、本件の目処が立つことによって本格的憲法改正がトーンダウンするようなら、そもそも憲法改正の目的が自主自立の方向ではなく対米従属の深化にあったのではないかとの疑いも出てくる。

 では、政府は集団的自衛権の行使を可能とすることに、いかなる政治的目的を見出そうとしているのか。

 メディアで専ら議論されているのは、同盟国である米国あるいは米軍に対する攻撃を、能力があるのにもかかわらず傍観しているようでは、日米同盟は破綻するというもの。

 これについては、日米安保条約5条の規定により、日本国の施政下にある領域内で、かかる事案は重大な問題となるが、領域外では問題にはならない。つまり、条文上、これによって日米同盟が破綻することはない。

 問題は、2005年に日米で合意した「日米同盟:未来のための改革と再編」(普天間基地などを含む在日米軍の再編のためのロードマップの根拠文書でもある)において、日米同盟が、テロと戦いなど世界規模での活動として役割を果たすとして、以下の約定を交わしていることである。

  • 地域及び世界における共通の戦略目標を達成するため、国際的な安全保障環境を改善する上での二国間協力は、同盟の重要な要素となった。この目的のため、日本及び米国は、それぞれの能力に基づいて適切な貢献を行うとともに、実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる。
  • 自衛隊及び米軍は、国際的な安全保障環境を改善するための国際的な活動に寄与するため、他国との協力を強化する。

 つまり、米国や米国に賛同する諸国とともに、世界中で展開される軍事作戦に日本も参加することを約束した(少なくとも米国はそう受け取った)のである。

 テロとの戦い以降、米国が同盟国に期待しているのは、米国が意図する国際的な軍事作戦に同盟国が部隊を投入することである。これができないならば、同盟国としての役割を果たしているとはいえないというのが米国の見方だ。これについては、元米国防副次官リチャード・ローレンスらがオバマ大統領に宛てた「外れてしまった期待をどうする(2009.11)」(『同盟が消える日』として日本語翻訳出版)などに詳しく記されているが、そのローレンス氏が中央公論(2010.1)でも「見せかけの同盟はもう維持できない」として、自国防衛でさえ責任を果たしえない日本の無責任な米国依存体質に警告を突きつけたのだ。この状態はそのまま変わっていない。

 問題の本質は、日本側が、米側から強い要請があれば即座にそれに答えて合意文書を交わすのだが、実際にはその合意を具体化することなくだらだらと遅延させる姿勢にある。

 この、姑息ともいえる日米交渉の特性は、戦後、MSA協定を結ぶために日本側の防衛努力を米国に約束した「池田―ロバートソン会談覚書(1953年10月25日)」以来、ほぼおなじパターンを繰り返している。この覚書では、日本側が(米国が要求する)十分な防衛努力を完全に実現する上で、次の4つの制約があることを強調した。

  • 法律的制約  憲法第九条の規定のほか憲法改正手続きは非常に困難であり、たとえ国の指導者が憲法改正の措置を採ることがよいと信じたとしても、予見し得る将来の改正は可能とはみえない。
  • 政治的、社会的制約  これは憲法起草にあたって占領軍当局がとった政策に源を発する。占領八年にわたって、日本人はいかなることが起っても武器をとるべきではないとの教育を最も強く受けたのは、防衛の任に先ずつかなければならない青少年であった。
  • 経済的制約  略 
  • 実際的制約  教育の問題、共産主義の浸透の問題などから多数の青年を短期間に補充することは不可能であるかあるいは極めて危険である。

 そのうえで、会談当事者は日本国民の防衛に対する責任感を増大させるような日本の空気を助長することが最も重要であることに同意し、「日本政府は教育および広報によって日本に愛国心と自衛のための自発的精神が成長するような空気を助長することに第一の責任をもつものである」として、米国から経済援助を取り付けた。

 現在も、シリアへの対応などを見ると、日本政府は即座に米国に賛意を示すが、他の賛同国とは違って、具体的軍事制裁へは参加するつもりはない。これに対して、ドイツなどは明確に反対の意を示した。ドイツ国民の意思に沿った判断だ。

 日本政府は、このように、アメリカへの追従的スタンスと、国民への説明に修正不可能とも思われる大きなギャップを覆い隠しながら、米国のみならず日本国民に対しても無責任な米国依存をし続けてきた。

 本来、集団的自衛権の問題は、「日米同盟:未来のための改革と再編」を結ぶ時点で結論を得てなくてはならない問題である。

 このような、日本の安全保障の根本に関わるような日米合意を結ぶのならば、国民的議論の上、国民の同意を得なくてはならない。逆に、政府として国民の同意を形成できないような約束はしてはいけない。今頃になって、「友人が暴漢に襲われたときにたすけなくていいのか」等という子供だましのような議論をしているようでは話にならない。遅ればせながら、対米約定の実効的担保を取るのが、集団的自衛権議論の政治的目的だとしたら、下将の策といわざるを得ない。

 現実の政治判断は厳しい。例えば、米国が暴漢のように振舞っているときに、それに手を貸したらどうなるのだ。目先のことだけでなく歴史的評価を視野に入れなくてはならない。集団的自衛権を可能にするというのなら、自立した主権国家らしく、是々非々で米国と議論できるようにしなくてはならない。米国の要求に対して、ドイツ等と同じように、是は是、非は非とはっきりものを言うことこそ本質的課題であろう。

 さらに、一言を付加する。集団的自衛権を可能にするというなら、日米安保条約の条文を修正し(日米同盟の対象範囲や活動内容が大きく変わっているのだから当然である)、対等な立場で軍事協力をすることを明記し、併せて、NATOの地位協定などを参考に占領下のような事前協議・地位協定を見直して、対等な主権国としての当たり前の状態を取り戻すことを大きな目的をするのが良将の策というものだ。(あ)

-大和心トップに戻る-

サイトマップ お問い合わせ Q&A 明治神宮外苑 明治神宮の結婚式 刊行物の御案内 崇敬会について 武道場 至誠館 国際神道文化研究所 宝物殿 明治神宮へのアクセス 明治神宮の自然、みどころ ご参拝されるかたへ 祭典と行事 明治神宮とは トップページへ 最新情報 至誠館の歩み 図書紹介 入門案内・施設概要・地図 コラム「大和心」 武道とはなにか 寄稿「私と武道」 海外要人の来訪 各課の鍛錬時間 年間行事とお知らせ 国際交流 至誠会(門人の会)便り