メニュー
明治神宮ロゴ
メニュー
コラム「大和心」
タイトル

 8月15日の熱き終戦の日が近づくにつれて、米ハリウッド映画「終戦のエンペラー」の映画予告がひときわ目を惹いた。

 7月19日の産経新聞と朝日新聞が2面見開きをつかって“共同広告”を出したのは、映画の宣伝としては異例だった(ついで8月9日に産経が一面広告)。

 思想も報道姿勢も違う両紙が共同で今の世論に働きかけたこと。しかも映画は、“EMPEROR”とあるが、昭和天皇とマッカーサーGHQ最高司令官との衝撃的会見がテーマで、映画の真の意図を図りかねたほど……。

 意見広告を一覧し、実際に映画をみた上で、その狙いを考えてみようと、誘いにのってみた。

 紙面は、日米の俳優が扮するお二人の写真がデカデカと両側にのせられていて、『私はこう見る!映画「終戦のエンペラー」公開直前 座談会』と題して、次の4人の有識者の意見が紹介されている。

 竹田恒泰 作家・慶應義塾大学講師
 古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員
 保阪正康 ノンフィクション作家・評論家
 岩井克己 ジャーナリスト・元朝日新聞編集委員

 産経は古森氏が、朝日は岩井氏が代表しているようにも見えるが、それぞれに率直な感想を述べている。製作者の意図を反映していると思われる見出しも歴史を知らない現代への常識的な問いかけとなっている。各氏の意見は、次のようだ。

「知っておきたい終戦直後の真実」
・岩井氏「若い人が戦争を考える出発点になる作品」

―昭和天皇は、冷徹な国際感覚を持っていましたが、おそらくむくなところのある人でした。マッカーサーがふんぞり返って写真を撮った後、コロッといくのもそういう人柄にうたれたからでしよう。映画には明治からの人のえにしが詰まっています。

「天皇とマッカーサーの真の姿とは」
・古森氏「お2人の写真を知らないアメリカ人はいません」

―この映画で一つだけ圧縮されたものがあるとすれば、お2人が並んだ写真です。アメリカでは、歴史の本でも、一般の本でも「第二次世界大戦が終わりました」「日本が負けました」とういう記述に必ず出てくる写真なんですよね。今の日本人よりもアメリカで知られているのではないかと思います。映画のラストで語られる言葉は、どこまで本当なのか。写真を見て育ってきた私は、写真について改めて考えさせられました。

・保阪氏「私自身、アメリカに対して恩義を感じている世代です」
―天皇とマッカーサーの会見は9月27日。フェラーズが意見書を出したのは10月2日で1週間後です。この意見書の内容がいろいろなフェラーズの言葉となって映画のなかで使われています。フェラーズの考え方に製作者がかなり共鳴しています。同時にマッカーサーの描き方が俗物になっている。これは今までの映画にない特徴です。

「日本の真の姿を理解する出発点となる作品」
・竹田氏「天皇がどのように国民を救ったかという視点が必要」

―映画のテーマは、天皇がどう救われたかというように見えるけれども、天皇はどう国民を救ったかという視点で併せて見ないといけません。――歴史をひもといていくと真珠湾があって原爆があり、終戦となる。それをどう理解していいのか混乱してしまいます。――日本とアメリカでこんなに歴史認識が違うのに、それを棚上げし、友情を深めてきました。日本にとってもアメリカにとっても同盟国である。そんなことができるのだろうかと思います。それはこの映画が扱っているテーマであり、戦後の世代がいかにアメリカを理解するかについての非常にいいツールになっています。

 こうして有識者の問題意識を学んで、映画鑑賞をすると――。

 結論は、一見の価値あり。歴史を知らない日本人に、戦争、敗戦、占領。天皇とマッカーサーの会見、そして今日の日米関係のあり方までを考えてもらうにいい教材となっている。ぜひみてほしい。

 だが、それだけでは、ヴィジュアルな映像に興味が流されてしまうだけ。自ら問題意識をもって日本人としての歴史認識を深めてもらいたい。

 そのための一書としてすすめたいのが、『終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし』(岡本嗣郎著、集英社文庫。平成14年ホーム社より発行の『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』を文庫化したもの)。映画パンフレット(700円)も参考となる。製作者の奈良橋陽子氏が、この映画にも登場して、明治天皇の御製を朗詠する印象的シーンを演ずる関屋貞三郎宮内次官の孫にあたると記されているが、同氏が1冊の本――日本を愛したアメリカ人と、そのアメリカ人に日本の魅力を伝えた日本人留学生――と出会うことでこの映画が生まれてきたことに納得がいく。

 原作本の著者・岡本氏は、ノンフィクション作家ですでに平成15(2003)年に亡くなっている。同書は、映画の主人公ボナー・フェラーズ准将と彼に協力した敬虔なクリスチャンの河井道(『武士道』を著し、クエーカー教徒の新渡戸稲造の弟子で、恵泉女学院の創立者)の生涯が描かれている。河井道は、明治10(1877)年7月、三重県伊勢山田(現在は伊勢市)で生まれ、父方の河井家は世襲で伊勢神宮の神官を務める格式の高い裕福な家柄だったとある。この2人の人間関係を知ることで、この映画の出来上がって行く過程もみえて全体像もつかめてくる。ただ映画では、キリスト教徒としての河井道は出てこない。

 フェラーズのラフカデオ・ハーン研究について、高橋史朗・明星大教授は、『「終戦のエンペラー」主人公の光と影』(8月24日産経)と題して次のように興味深い指摘をしている。

 基本的には史実に基づいて製作されているが、主人公であるボナー・フェラーズ准将(マッカーサーの軍事秘書官)に関して重要な史実が映画では紹介されていなかった。
 それはフェラーズが対日心理作戦をリードし日本人の心に戦争に対する罪悪感を植え付けるためにGHQ(連合国軍総司令部)が行った「ウォーギルトインフォーメーションプログラム」(戦争犯罪情報宣伝計画)に深く関わった人物だということだ。映画では「天皇の大恩人」として描かれている。これも確かな史実ではある。しかし、彼のもうひとつの顔を見落とすべきではない。

 と。主人公の光と影をみて行くということは、日本人にとって、「戦争のエンペラー」の大きな教訓かもしれない。それは武道論からいえば、表向きの人間関係だけをみるのではなく戦略的思考のすすめといえるかもしれない(い)。

終戦のエンペラー

写真 『終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし』
(岡本嗣郎著、集英社文庫)




-大和心トップに戻る-


サイトマップ お問い合わせ Q&A 明治神宮外苑 明治神宮の結婚式 刊行物の御案内 崇敬会について 武道場 至誠館 国際神道文化研究所 宝物殿 明治神宮へのアクセス 明治神宮の自然、みどころ ご参拝されるかたへ 祭典と行事 明治神宮とは トップページへ 最新情報 至誠館の歩み 図書紹介 入門案内・施設概要・地図 コラム「大和心」 武道とはなにか 寄稿「私と武道」 海外要人の来訪 各課の鍛錬時間 年間行事とお知らせ 国際交流 至誠会(門人の会)便り