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コラム「大和心」
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7人目の海外武道研修生
 明治神宮至誠館では、「神道と武道を通じた日本文化研修」を目的とし、毎年、海外の友好道場から研修生を招致している。今年は、ノルウェーからITや映像を専門に仕事をしてきた54歳の研修生を受け入れた。

 言葉で理論的に思考する欧米人が、比較的に安定した社会秩序の下に、長い時間をかけて慣習的に形成されてきた日本の伝統文化を理解するには、武術の稽古や神道の行のような体験的アプローチが適している。

  今回の研修生で7人目となるが、彼らの神道文化に対する所感は、それぞれ視点は異なるが総じて肯定的である。その細部は、明治神宮至誠館ホームぺージ内の『寄稿「私と武道」』 に掲載しているのでご覧になっていただければわかる。

 ノルウェーの研修生は、「相手のことを自分のことのように思い気遣う」日本のすばらしい文化が心に残ったという。ひとつの戦いでもある武術の稽古においてさえ、日本人は相手にたいする心遣いを忘れない。生活、仕事、日常の万事において、人のために心を尽くす。そうした日本文化を直接体験して感銘を覚えたのだ。

 彼によれば、欧州でも、そうした心を人々は持ってはいるが、それ以上に効率性や功利性が優勢され、心情的結びつきは法的契約関係に押しのけられるという。

 日本の伝統文化の価値を高く評価する研修生だが、他方、現状の日本の政治にたいしては評価が厳しい。具体的には、世界が注目している原発事故に対する曖昧で不透明な対応。そして、常に隣接する複数の国と対立し、地理的島国である以上に政治的友好国がない孤立した存在に見えるという。

 日本人からすれば大いに意見はあるところだが、欧州からはそう見られているということだ。私がドイツに暮らしていたときの経験からも、かの国のメディアでは、例えば日中・日韓関係で問題が生じると、常に日本は悪者として報じられていた。米国に暮らしていたときも同じ。そもそも、米国のメディアが日本を取り上げること自体が極めて少ないのだが、歴史問題などで周辺国との問題が生じると、異常なまでの日本非難が巻き起こる。

日本人の精神文化と伝統社会の思想を政治に
 先日、至誠館の「武学」で、麗澤大学の岩澤知子准教授に「日本文化論再考」という講義をしていただいた。その中で、米国はもとより世界の国々で日本文化を学ぶ人たちのスタンダード・テキストはルース・ベネディクトの『菊と刀』だという。この本は、敵国としての日本を(対日戦争を扇動する)政治的目的で研究したもので、「日本の歴史は伝統的攻撃性という病的特性を有し、日本人は道徳律が欠如している」と断定している。そして、この本が、現代もなお海外で日本文化を学ぶ際の標準テキストとして定着している事実を踏まえれば、欧米メディアの反日議論が沸き起こる理由が理解できる。

 しかし、岩澤准教授が問題視する最大のポイントは、当の日本人が『菊と刀』に書かれた屈辱的日本人論をあたりまえのように受け入れているという点である。 その原因は、日本人としての主体性の欠如である。強制収容所に収監されている厳しい立場の在米日本人へのインタビューをもとに政治的意図で書かれた『菊と刀』の日本文化論の偏見を正すどころか、それに疑問も生じない日本人にこそ問題があるということだ。

 さらなる問題は、『菊と刀』の日本文化論には反感を持ちつつも、自己保全のためそれを受け入れる、いわゆる「戦後保守」だ。この点について、岩澤さんが紹介した日本学術振興会特別研究員の白井聡氏は、「(今後の日本の)本当の対立軸は、人間性の本質に関する永遠の問題、つまり、主体性を持とうとする人間とそれを拒む人間との対立、より具体的に言えば、リスクを負ってでも自由を求める人間と安定さえ得られるなら隷属をよしとする人間との対立です。」(atプラス16号掲載記事「暴力としてのアメリカ・ポスト「戦後」の進路を問う時代に」より)と指摘している。

 日本文化を知らない偽日本人や安定さえ得られれば隷属をよしとする卑屈な日本人が、日本社会を管理する戦後日本の政治は、世界の軽蔑と批判に晒されている。

 この状態をいかにして打破するのか。私は、神道と武道の持つ精神文化に関心を持ち、武術の稽古に励む外国人との交流の中から、そのひとつの答ともいうべき明るい兆しを見出している。

 彼らは、「日本人は、これほどすばらしい精神文化と伝統社会を有しながら、なぜ日本の政治は正反対なのだ」と疑問を投げかける。つまり、日本人の精神文化と伝統社会の思想を政治に反映させればいいのに何故そうしないのだ、といっているのだ。

 一旦、政治的に世界に定着してしまった悪意に満ちた日本人観に議論で挑む「過去との戦い」ばかりでなく、実際の政治と社会活動で日本文化の真意を世界に示していく「未来の戦い」が重要である。

 「存在し奪い合う」だけの文化思想を「共に生み成す」文化思想へと正す「八紘為宇」の真意を、日本人が政治や社会活動の場で顕現し、「天の下に世界が一つの家族となるような社会をつくり為そう」と世界に呼びかけ実践するのだ。

 そのためには、日本人が、日本文化を正しく体する日本人になるための教育と、リスクを負ってでも日本人が日本人として生き抜くための心身の鍛練が必要だ。武道教育が担うべき使命は、そこにあると思う。(あ)

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