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コラム「大和心」



 今年、世界の大舞台で胸躍らせ、日本人としての誇りを感じさせてくれたのが、メジャーリーグで大活躍しているイチロー選手の9年連続200本安打。一方、国内のプロ野球では、パ・リーグの野村克也監督ひきいる楽天イーグルスの快進撃が、目を見張った。

 球団発足時からダントツの再開でどうなることかと心配されたが、ボヤキのノムさんこと野村が監督となって3年、生まれ変わった。一躍リーグ2位にのし上がり、優勝争いをかけたクライマックスシリーズ第一戦を勝ち抜いたサプライズ。第二戦で惜敗したものの野球ファンのみならず、猛将に弱率なし、不況下に忍耐を強いられた各界リーダーたちを元気づけた。

 そこには昭和10年生まれ、20歳からプロ野球の選手生活を生き抜き、監督業で修養をつんだ野球兵法があった。それを野村は、日本人の無形の強みをいかした“弱者の兵法”と呼ぶ。

 さきの選挙で国民は、米国追随型の自民党から、対等な同盟等を唱える民主党への政権交替を選択。民主党は果たしてアメリカ離れができるのか。軍事大国・中国との資源領土問題、北朝鮮との拉致、核威嚇問題地球規模の自然環境、経済不況問題等々、日本の国家戦略を明確に打ち出し、実行していくべき国際情勢の下で、国民国家の国民一人ひとりの安全保障観(武道、兵法の気構え)の高まりが必要となってきている中で、身近で楽しげな野球兵法の社会的効果は大きいものがある。

 現代に体育スポーツ化した武道は大流行だが残念ながらそこからはいま必要とされる生きた兵法(戦略、戦術)が編み出される兆しは見えない。

 しかしかつてアメリカから伝わってきた野球とはいえ、日本の野球は大きく発展し、いまではメジャーリーグに匹敵、あるいは凌駕するほどの実力になって、野村流野球兵法を編み出すほどに成熟してきたのは、民族文化の面からも興味深いことである。

 野村監督は、2009年3月に開催された第2回ワールドベースボールクラシック(WBC)で、原辰徳監督に率いられた日本代表がみごと、二大会連続の優勝を達成したことで、「日本の野球は世界一である」ことを世界に証明したという。そしてメジャーリーグが日本流の練習を取り入れはじめ、諸外国が日本のやり方を手本にしているのは間違いないという。

では、その弱者の兵法とは何か――。以下、野村克也著『弱者の兵法』から抄録する。

 それでは、諸外国が取り入れようとしている日本野球とは   具体的にどのようなものか。ひとことで言えば“弱者の兵法”である。日本は決して強者ではない。日本人は目に見える力――すなわち身体のサイズや体力、パワーそしてそれらが生み出す「打つ・投げる・守る」という技術力など――という点では、アメリカやキューバをはじめとする諸外国には太刀打ちできない。
 いい換えればそれは、日本人の強みを活かすことに他ならない。すなわち、事前に可能な限り情報を集め、正確に分析し、それを最大限に活用して周到な戦略、戦術を練る。そして、豊富な練習量で培った組織力やインサイドワークや緻密さ――私が常々いっている“無形の力”――を駆使することで、個人の力ひいては体力やパワーの不足を補うという戦い方である。それが諸外国に対抗しうる唯一の手段であり、日本野球の最大の強み、武器になるのである。

と。「日本は決して強者ではない」というのが前提である。それは伝統武道の国際化の中でも同じである。しかし、有形の力には限界がある。だが「無形の力」には限界がない。磨けば磨くほど、突き詰めれば突き詰めるほど、その力は大きくなる、と教えている。

 一野球人であるが、一流に秀でた現代兵法家の重みが感ぜられる。(い)

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