メニュー
明治神宮ロゴ
メニュー
コラム「大和心」


《日本武道への関心はどこにあるのか》
 「国際至誠館武道協会」(International Shiseikan Budo Association=略称・ISBA)加盟を希望する道場の増加傾向は今後も続きそうであり、改めてグローバル化が進展する中で、国際的な武道の広まりをどう捉えるのかということについて考えてみたい。

 現代の国際社会のグローバ化は、あらゆる分野の情報の共有化を可能とし、意図しなくとも地域固有のものが国際的に一般化しうる環境にある。土着の産土(うぶすな)の神々の生(な)せる業が、瞬く間に普(あまね)く世に伝わるといった様子である。

 国際的な武道の広がりも、インターネットでの情報取得の容易性等グローバル化の影響もあり瞬間風速的な感心によって形成されているという面と、日本の武道の中にある価値観を見出し世界各国に根を這って定着してきているという両面があるようだ。

 では、海外において関心をもたれている日本の武道の価値観とは何だろうか。大別すれば、その技術的側面への関心と精神面への関心とに区分できよう。技術的側面への関心だけであれば、その技術が生まれた国柄等はさほど意味を成さず、無国籍の格闘テクニックとして、ボクシング、レスリングといった列に加えられることになろう。

 しかし、技術だけではなく、武道の持つ精神面への関心があれば、その武道が生まれ育った国の文化・伝統ということにまで関心が及ぶことになる。もちろん、武道の持つ精神面のみへの関心ということであれば、それは学術的研究のようなものになり、これもまた本来の武道とはかけ離れてしまう。

 したがって、日本の武道への関心として定着するためには、武道の持つ精神面と技術面両方への関心が前提となる。



《自然の普遍的原理に立ち返る》
 さて、では武道の精神と技術に関心を持って、自ら武道の修練に打ち込もうとする外国人は、日本が生んだ武道の特殊性に関心があるのか、そうではなく、武道が持つ普遍性に関心があるのだろうか。少なくとも、至誠館武道を学ぼうとする面々は、後者が多いようである。それは、これまでの海外武道セミナーのテーマが、自らの民族の原点を探すことをテーマとしていることからも明らかである。

 つまり、個々の民族の持つ独特の文化・伝統の中には、民族を超えて共通する本質的な普遍性が存在し、日本の武道の中の普遍的なものから自らの民族の原点を探り出そうというのが、彼らの武道を学ぶ動機になっているように思われる。

 戦闘者が、単なる戦闘技能を有する武者に終わらず、道理を探求し実践する士道者として、自立した生き方を律するのが武士道であり、日本武道が持つ特徴である。自らの主体を精神に置き、精神の目的に応じて肉体を使い切る生き方である。キリスト教者である内村鑑三は、「日本武士は、その正義と真理のため生命を惜しまざる犠牲の精神に共鳴して神の道に従った。武士道がある限り日本は栄え、武士道がなくなるとき日本は滅びる」とまで断言し、武士道を「日本における唯一の道徳・倫理であり、かつ、世界最高の人の道」と賞した。この、人間としての生き方、この奥深い普遍的原理こそ、世界的に注目を引く要因なのだと思われる。

 このような戦闘者の生き方としての武道の背景にある日本の神道文化にまで関心が及べば、さらに人類共通の普遍性の探究心を刺激することになる。

 今年の春に創設した「国際至誠館武道協会」のメンバーの中には、欧州の諸民族は、キリスト教に政治の正統性を求めた政教一致時代と、人間個々の権利に正当性を求めた啓蒙主義時代を経て、長期間にわたり民族と個人の個性を消滅させ平準化・均質化した社会の形成を追及し、自らの起源と自然発生的普遍性を失ったという見方がある。

 そうした見方をもつ彼らにとって、日本はいまだ神々の時代からの普遍性を引き継いでいる民族であり、その普遍的原則は、本来、世界中の民族が持ち合わせていたものであろうという仮説なのだろう。

 自然発生的普遍性とは、テキストを用いて知識として理解し制度として規範化する人工的普遍理論とは異なり、物事を感性で感じ取り、身につけた自然な感覚によって是非を判断するものである。例えば、山の標高、木の高さと直径、原始林の定義、小川の水の成分は人工的知識の作業であるが、山の高根の見晴らしに爽快感を感じる、森の中の巨木に畏敬の念を感じる、鬱蒼とした原始林の闇に恐怖を感じる、小川のせせらぎに清々しさを感じる、人の面相から正気や邪気を感じる等心の動きは自然な感性の働きである。

 日本の武道や神道は、人間の持つ感性の歴史と経験で築き上げたものであって、知識のマニュアル化ではない。逆に言えば、現代において武道や神道を学ぶ重要な意義は、知識の啓蒙作用によって失いかけた人間の感性を磨き、自然の普遍的原理に立ち返るということなのかもしれない。
(あ)

-大和心トップに戻る-

 

サイトマップ お問い合わせ Q&A 明治神宮外苑 明治神宮の結婚式 刊行物の御案内 崇敬会について 武道場 至誠館 国際神道文化研究所 宝物殿 明治神宮へのアクセス 明治神宮の自然、みどころ ご参拝されるかたへ 祭典と行事 明治神宮とは トップページへ 最新情報 至誠館の歩み 図書紹介 入門案内・施設概要・地図 コラム「大和心」 雑誌で紹介された至誠館 武道とはなにか 寄稿「私と武道」 海外要人の来訪 各課の鍛錬時間 年間行事とお知らせ 国際交流 至誠会(門人の会)便り