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コラム「大和心」



 

今夏の海外講習は一つに絞り、ドイツの中央部、フランクフルト空港から車で30分のダルムシュタットという人口4万人を擁する工業都市で開催された。

 日本を含む10カ国、95人が集い、武道修練のむすび合いによって充実した気概を養うとともに、日本武道の国際化という流れの中で、至誠館武道が担う一つの使命が明らかになってきた感がある。

 それはこれまで講習ごとに強調してきたテーマ「魂を練る武道、動揺しない心の修養」が、4年間という一つの区切りの中で、年ごとにその趣意が理解されてきて、その努力、成果が形にあらわれてきたといえることである。

 それらを具体的にあげると――。武道を、修練する人々の霊性を磨き、魂を練って、精神性を高めるものとすること。グローバル化の混迷、対立の不安の中で、民族の古き良き精神性を保持、回復させつつ、心の安定(平和)をはかること。一流派にこだわらず、総合的に武術をとらえ、武術的本質を探求しながら、武人(戦闘者)の精神としての己の武士道を追求すること。

 いわば「道と術」の両面の総合的探求をめざしながら、これらの共通した“心性”の共有を日本神道の伝統的儀式と先祖観、自然観の提供で各国参加者独自の心の探求に資して行く研修となっていることである。

 その意味で、武道と同じく、神道的思考と実践は共通の基盤となりうるとの共感がある。これらの現況を一語で言えば、

  日本古来の神観にもとづく“真の武道”(神棚のある武道場)を、現代世界に普及し、将来に武道による心のネットワークを発展させて行く

ことと言える。その意味で、

  海外での武道研鑽は、現代の曖昧模糊(あいまいもこ)とした状況にある“やまとだましい”を鍛え直して、大いに役立ち得るものとすることができる。まさに、いま、日本武道を根底とした人間の魂を練る“国際武道”が生れつつある

といえるだろう。すでに広い地域で多くの実績を積んでいるともいえる。

 平成18年8月から3年の各講習のテーマ、参加国、人数は次の通りである。

平成18年 ポーランド・プォツク 「鹿島の一之太刀」 7カ国95人
イギリス・ウェールズ 「武道のむすびの力」 8カ国62人
平成19年 フランス・ヴェルサイユ 「霊性の息吹」 10カ国66人
      ポーランド・プォツク 「祓の太刀」 10カ国90人
平成20年 ノルウェー・ブランプ 「動揺しない心」 8カ国81人
      ギリシャ・カルベニシ 「武士道とギリシャ精神」 8カ国58人

以上にみられるように、3年の連続と昨年10月のフランス・パリでの日本武道祭での演武、講習の経験の中から、今回主催したアニタ・ケーラー女史(合気道五段、鹿島の剣初伝)が選択したテーマは、「個と全体」である。その意味は個々の術と全体と統合する道であった。また、ドイツ側の問題提起は「ゲルマン人とは何か」であった。

 折しもローマ帝国とゲルマン人との戦闘の歴史から数えて、2000年となることから、昨年12月に3回にわたりテレビ放映されて話題となったという「DIE Germanen」のDVDが、開講前夜の会合で上映され、参加者は、あらかじめローマ帝国皇帝のジュリアス・シーザーの『ガリア戦記』とタキトゥスの名著『ゲルマーニア』を読み予備知識をつけての講習参加となった。

 また講習中日のリクリエーションでは、ゲルマンの森の古代巨石群の跡地、GEO NATURPARKの散策が名ガイド付きで行われたほか、ローマ帝国の駐屯地がおかれた、サールブルグ砦を見学、近代ドイツ統一の象徴となっているライン河畔にそびえ立つニーダーヴァルト丘のフランス(ナポレオン皇帝)側に眺むゲルマニアの女神像の見学が行なわれて、参加者各自の国家、民族意識が一段と鼓舞された内容となったのは興味深い傾向であった。

 こうしたドイツ側の企画に対して、日本側が提示したのは、武道における神事(祈り)と、武の祓(はら)いの意味。そして伊勢の神宮の映像による伝統継承と維新の思想で、破壊、対立とは異なる文化の紹介となった。

 霊性を深め、民族性を意識することで、魂を練る武道講習は、精神性を探求するという趣意の効果をあらわしてきているといえるが、だからといって、技術、体力、思考面の追求がおろそかになったわけではない。

 講習における連日(1日2回の5時間×6日間=30時間)の実技面の実修、向上があるからこそ、精神面での意欲的探求も高くなってくる。

 10カ国95人の参加者は、総括指導1人、至誠館および外国人指導員10人によって1対7〜8の稽古で確実にレベルアップし、充実感を体感したと自負しうるだろう。主催者は、これまでの成果をふまえて、最も効果のあがった講習となったと喜んでいた。

 参加協力した至誠館の指導員、アシスタント役を担った門人の日本人22名全員にとって海外の武道修練は、外国旅行を楽しむ休暇というより、厳しい鍛錬の場となっていることは理解できるだろう。

 特筆すべきは、そうした魂を練る鍛錬の場としての海外の道場で、講習の始めと終わりに執り行われる神事、神々への祈りの厳かさと静かさは、格別の味わいを醸し出していた。祈りの祝詞(のりと)に言霊(ことだま)の響きを感じて、参加者全員の荒魂(あらたま)が鍛えられ、鎮められて行く心地がしたことであった。
(い)

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