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コラム「大和心」




 六本木、国立新美術館で開かれている「横山大観―新たなる伝説へ」の展覧会(3月3日まで)は、みごたえのある催しで、盛況を呈している。昨年秋以来の新聞マスコミの宣伝力も人気の理由にあげられるが、ポスターに掲げられた「或る日の太平洋」(昭和27年)の一面の絵画が力強く、鮮烈な印象を与えていて、時宜にかなったというべきか。

「或る日の太平洋」の作品に

 太平洋が大きく裂け、その間から龍が稲光りを放ちながら富士に向かって上昇する図である。縦長の画面いっぱいに描かれた交錯する波濤がダイナミックな作品となっている。

との説明がある。

 横山大観(明治元年〜昭和33年)は、明治期日本美術の復興に尽力し、美術教育の基礎を定めた岡倉覚三(天心)に師事、その理想主義をくむ日本画家で、清新な構図、みずみずしい筆致、豊かな情感によって近代日本画の最高峰となった人で、代表作には、《生々流転》《瀟湘八景》《夜桜》や多くの富士山の図がある。

 この画が描かれた昭和27年(1952年)は、敗戦日本が連合国の占領からようやく開放されて、独立を回復した年である。霊峰富士に向って、荒波の中、神龍が舞い上がって行くもので、作者の勇躍たる精神があらわれている。同じく図譜の解説には、敗戦後の昭和21年1月に、大観による日本美術院の新年の挨拶文の草稿と思われる文章が記されている。

  三千年の歴史は潰滅し、日本なき太平洋に対し私共は只々感慨無量であります。只独り東亜の芸術、力ありてこそ新しき日本建国の先駆となる事、此こそ再び世界に闊歩するのを堅く信じる者であります。独り優れた東亜の芸術こそは新しき日本の建設せられんとする一助となる事を堅く信じる者であります。

と。独り東亜の芸術、力ありてこそ日本建国の先駆となる。独り優れた東亜の芸術こそ新しき日本の建設せられんとするとの心意気が示されている。

 何とも雄々しく、頼もしい気概で、今の世に待望される勇者の姿というべきであろう。

 明治元年に、水戸藩士の家に生まれ、『東洋の理想』『アジアの目覚め』『茶の本』などを著した岡倉天心を師と仰いだ横山大観の日本精神の躍如たるものがあり、鼓舞されるところ大である。



 昭和33年、日本画壇の長老として89歳まで生きた大観の岡倉天心(大正2年没、50歳)を慕う心は深く強いものがある。

 岡倉先生というお方は、本当に偉い人でした。時がたてばたつほどその偉さがわかって来ます。あれで政治界に志せば大政治家になっていたでしょうし、その他何でも往くとして可ならざるはなかったお方でした。いわば異常とも見られる天才児、あのくらいの人は稀で、要するに大偉丈夫だったのです。

 と回顧している。いかに影響感化が大きいかがうかがわれるが、ここにはもう一つの面からその絆の深さをみてみたい。

 先生はまたお酒を大変召し上がられました。大酒家という方でしょう。二升は飲んだ人です。一升ぐらいの酒を飲んで酔うようだったら俺の席には出るなというふうでした。


 まじめな精神面のみでなく、心情のふれあう酒道の方でも相当に鍛えられたことが楽しげに述べられているのだが、その中に、岡倉天心作歌、横山大観スピーカーという珍しい「日本美術院の歌」というものがあって、よく歌ったという。その歌詞がいい。

  谷中鶯 初音の血に染む紅梅花
    堂々男子は死んでもよい
  奇骨侠骨 開落栄枯は何のその
    堂々男子は死んでもよい

 というもの。谷中、初音は、学校界隈をさす。これは何でも明治31、2年日本美術院が創立された頃のこと、王子の料亭で、一夜岡倉天心が即興的に作ったもので、大観は、これを歌うと、妙な気持ちになったと述懐している。武道欄に料亭での作歌とは、ふさわしくないといわれそうだが、当時の男子たるものの気概を知るにはいいだろう。大観は言う―。

 後半の「堂々男子は死んでもよい」というところに来ると、人生意気に感じて、本当に死んでもいいという気持ちになるから妙なものです。同気相求むるの士が集まって酒でも飲んでいると、自然とこの歌が出て来て、私などもよく歌ったものです。         (横山大観『大観画談』昭和26年初版、講談社)

と。まさに国家隆昌の明治の御代に、男子同気相求むるの士たちの旺盛なる気概があらわれ出る歌といえる。「今の時代ならおそらくこのような歌は出て来ますまい」と述べているのは、昭和26年頃、ちょうど「或る日の太平洋」が制作された頃。だからこそ、神龍が、霊峰富士に向って舞い上がる絵を描いて、日本国民の奮起を促したようにも思える。

 堂々男子は死んでもいい、との気概漲り、力ありてこそ新しき日本建国の先駆となる人々が輩出してほしい。それが今日の日本といえるだろう。

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