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コラム「大和心」

海外研修は武者修行の場

 8月は、北志賀での至誠館主催の合宿と大学の合気道部の合宿についで、ポーランド・ワルシャワ近郊のプロツク(12日〜18日)とイギリス・ウェールズ(20日〜25日)での鹿島神流と合気道の研修指導で渡海したが、収穫は大きかった。

 武道講習指導のための海外旅行は、昔でいうなら武者修行の場。オーバーにいえば“真剣勝負”の連続ととらえることもできる。

 つねに危険につきまとわれ、選択、判断、対応を誤れば“生命”にもかかわってくる。楽しい観光旅行などと油断すれば危うい目に遭う。

 実際、出発前日の10日は、ワルシャワ中継地のロンドン・ヒースロー空港でのテロ未遂事件が起きたため、初めから心を引き締めて臨んだ。延々と待たされる行列時の忍耐力。アクシデントの次を読み取る判断力。適時発揮しなければならない交渉力と対応力等々。どれほど語学力のなさをはじめ無力感を感じたことか。

 でも、武者修行の場と覚悟することで、結果如何に左右されずに目標に向かっていく気力を失わずにすんだ。

 それにしてもわが日本人の危機感知力のなさと交渉力のなさに比して、海外の人たちのタフさとの違いが目立った。稽古でも食欲でも彼らは旺盛で、大きな身体と強いパワーを持っている。なぜ小さくて弱々しそうで食の細い日本人が、彼らに武術を教えにはるばるこんな遠くにまでくるのかと疑問に思う時もあった。

 だが、そんな日本人の頼りなさ、力の弱さは、外国の異質の強い力に触れるごとに変わってくる。ひとつひとつの体験や稽古を続けていくうちに、その身体が柔軟さを帯びてきて、強く成長していく。同行した日本人もみるみるたくましさを増してくるのだ。日本人の心身はそうした優れた特徴を持つ。

 その飛躍ぶりの変化を問題とすれば、日本人こそ一番幅広く変わるといってもいい。長所は短所となりうるし、短所を長所に変える妙味がある。ここが武道で、長短一味といわれるところである。

 弱さを感ずる心は、逆に捉えれば、心のこまやかさである。だからこの神経を意識的に鍛えて身体をつくっていけば、時間はかかるが柔軟な肉体、旺盛な気力ができて総合的な精神力が生まれてくる。ここに武道修練の効果がある。

 剣術の一刀流の考え方は、必要な時と場所に、自らの持つ力を一刀に集中して出す。一心一体となって一刀にあらわすということになる。伊藤一刀齋の一刀流剣法では、

敵に向ふ時、勝負の是非を念はず
一心生死を放ち、命は天運に任せ
義を守りて臆せざる時、十方に敵無し
敵無きときは何を以てか負けん

と無敵の境を教えている。鹿島の秘太刀といわれる「一の太刀」は、その源流と考えられるが、このような心域から発せられる力なのであろう。武道は一心、一刀に始まる。

 道場稽古に限らず、日常生活の行動全面で、こうした心遣いでのぞめば武者修行の効果も一段と上るだろう。

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